菜苗だって、統は好き。

放課後。
七夕「ねえ、栄。菜苗は、女子大できゃっきゃっうふふな学生生活と、医学部入って勉強漬けな日々とどっちが幸せかな?」
栄「……。重い話を」
七夕「どうせ医者になるんだから、一回、女子大行っちゃうってのもありかもと思って。なんかそもそも昔の日本も医学部進むのに、教養学部みたいなところに一回入ってからまた試験に受からないと行けなかったんだって。アメリカみたいだよな。でも、大学入るのに浪人して、医学部進むのに浪人して、まじ大変だから、やめようぜってなったみたい。うん、でも、女子大よくない? 医者になってからじゃあ、きゃっきゃっうふふしてる暇ないぜ?」
栄「いや、それを言うんなら、何も女子大でなくても、高校を女子校にすれば?」
七夕「え、栄、女子校行くの?」
栄「行きませんし、行けませんよ? 七夕さん」
七夕「こんな男の子っぽい七夕のほうが女子校に行けるだから、世の中不思議だよな」
栄「性別の問題ですよ?」
菜苗「あ、しすこん数学者」ばったり出くわす。
栄「菜苗かて、統のことは嫌いじゃないくちのくせに」
七夕「そうなのか?」
菜苗「統さんを嫌いな人なんて、なかなかいないよ!? 誓子は、まあ、好き嫌いが激しく別れるけども…」
七夕「お前、その誓子の娘が目の前にいるのに、なんてことを口走るんだよ?」涙目。
栄「はいはい。菜苗は、誓子おねえちゃんは苦手やけど、統はまあまあ好きってことやな」
菜苗「はい、そうです」
七夕「じゃあ、菜苗は統のどんなところが好き?」
菜苗「うん、髪の毛がふわふわしているところかな。で、私の髪の毛は結構ストレートでしょう。私も、統さんの真似して、寝る前にみつあみしてみようかしら」
七夕「違う。髪型だけの問題じゃないぞ?」
菜苗「まあね。七夕くんは、母親の真似して、おかっぱ頭してるけど、なんかもう別人だものね。性格違うものね」
栄「うん、まあ、そういうことや」
七夕「菜苗、女子大に行ってみたりしないの?」
菜苗「え? 何のお話かしら」
栄「ほら、めぐちゃん、母校の女子大で講師に呼ばれたりするやんか。菜苗も混ざってみたら?」
菜苗「……。私、料理できないんだけど」
七夕「馬鹿だなあ、菜苗。料理できないから、料理教室に行くんだぜ!?」汗。
菜苗「ああ、うん。そうね」納得。「うん、でも、私、医者になるから。誓子は、ほら、あれでしょ? 『医者になることを誓う子』って意味で、誓子のくせに、あいつ、保健学科とか行きやがったから」
七夕「いいじゃん、別に!! 病気だったから、医者になるより、ナースになって、自分のお父さまと一緒に働きたかったの!! 二年間も時間節約できるんだよ!?」
菜苗「だって、名前、誓子よ!?」
栄「そこなんか」
菜苗「そこ以外、あるかしら? もう、あいつの名前、本匠カトリーヌ誓子じゃなしに、本匠ヒポクラテス誓子よね‼ そう、私が裏切り者の姉を超えるには、私が血液内科の医師になるしかないのよ!!」力説。
栄「いや、女の子に男の名前つけるのだけは、やめてあげて?」
七夕「目の色が…」
栄「うん、七夕。菜苗は、やっぱり、医者になるのが一番幸せなんじゃない?」
七夕「うん、そうだな。七夕が間違ってたよ」