遺伝子的には、間違っていない。


統ちゃんをめぐって争う綺麗なふたりのお姉さん。と、血筋が近かったり遠かったりする親戚の三人組の、ふたつの三角関係。
誓子ちゃんは、「私、統ちゃんのおしめだってかえたのよ!?」と申しておりますが、実は、朝陽ちゃんは統ちゃんが生まれる前から母親の次実ちゃんと顔見知りであったりします。実は、負けているんだよ。誓子ちゃん…。哀しいね。誓子ちゃんは、実の母親を亡くしたこともあって、統ちゃんに依存しているのです。一方の朝陽ちゃんは、生まれてすぐの統ちゃんの顔くらいは見ましたが、その後、統ちゃんが4歳になるまでその前に姿を現しておりません。
朝陽「せやかて、私、幼子の教育には悪そうで」
十代の女の子が、哀しいことを口走っております。そういうわけで、生まれたての統ちゃんを十分に堪能できたのは、誓子ちゃんなのです。でもって、統ちゃんが4歳になり、恋愛映画にドップリはまります。そこで、よく出てくる可愛いお姉さん。当時、朝陽ちゃんは、日本映画界にさっそうと現れた素敵美少女女優なのでした。それは、もう、統ちゃんだって夢中になります。次実ちゃんとは、別ルートで朝陽ちゃんと知り合っていた父親の昴耀さん。よっしゃ、愛娘のために一肌脱ぐぜ。そこで、朝陽ちゃんと統ちゃんは再会したのです。誓子ちゃん的には、大変な幼少期時代をお世話してきたという自負がありますから、たかだか数本の映画に出ただけのぽっと出の女に統ちゃんの尊敬の目を奪われたのが、腹立たしくてなりません。しかも、誓子ちゃんは亡き母親の代替として統ちゃんに依存しているのですから、必死になるのも仕方ありません。かくして、誓子ちゃんと朝陽ちゃんは顔を合わせてはしょうもないバトルをするのです。
姉、統の手をがっしりと掴む栄くん。どこからどう見ても完璧な美少年です。特に、数学界では、あの偉才望月昴耀数学博士の御子息として名高くそれはもう小さな頃から、数学雑誌の連載を通してその成長を見守られてきたのです。そんな天才児に嫉妬するいとこの菜苗ちゃん。もう、大変です。同い年でいとこの子が、数学の天才なのです。そして、自分は代々医者の家系。比べられないわけがないのです。ふたりの関係を知らない学校の同級生などは、「菜苗ちゃんって栄くんのこと好きなのかな」となどとぼけたことを考えがちですが、断じてありません。七夕くんいわく「菜苗の本命は、竹乃進」。そうして、栄くんに「菜苗は、はすっぱ娘」などと言われてしまうのです。
さて、七夕くんは誓子ちゃんの娘さんです。そう、遺伝子的には、間違っていないのです。
栄「統が好きな誓子お姉ちゃん。僕が好きな七夕。誓子お姉ちゃんと七夕は、親子。統と僕はきょうだい。そう、遺伝子的には、なんら間違ってへんのや」