津慕美ちゃんは、命の恩人。

本匠家。
栄「なんや、二人とも。しょげた顔しはってからに。ほれ、これ、くず屋の和菓子やで?」
菜苗「上から目線なのね」
栄「そら、立ってたからな。よいしょと」座る。
七夕「栄、津慕美ちゃんって、誰?」
栄「うん? うちの母親の大親友やけども、統からでも聞いたんか? 今日は、津慕美さんとこの何でも屋の手伝いに行ってたんや」紙袋をごそごそ。
菜苗「だから、なんでそんなとこにお手伝いに行くのよ。今日、七夕くんと私は、お父さまに着替えを届けに行ったけれども」
栄「はあ? お前、ボランティアのひとつも出来ひん女か。将来、医者になるなんて、笑わせてくれるな」
七夕「な、七夕はボランティアするぞ? 菜苗と違って」
菜苗「私だって、するよ!!」涙目。
栄「なんや今日の菜苗は、いつも以上にうっとおしいなぁ」頭、ぽりぽり。
菜苗「だから、津慕美ちゃんって、何者なのよ!? 早く、口を割りなさいよ!!」
栄「あぁ、そんなら、命の恩人や」
菜苗「は?」
栄「うちは、計画妊娠やからな。研究命のあの人が、統を妊娠出産するのにも、どうでもええ学会、重要な学会と振り分けて、ここや!! というところで、事に及んだんや。で、実際に、子供産んでみたら、そらあ、大変やろ。そこで、うちの母親はもうこれでおしまいと思い至ったわけや」
七夕「それじゃあ、栄、生まれないじゃん」
菜苗も、こくこく頷く。
栄「そう、そこで津慕美さんの出番や。彼女の夢は、子沢山母ちゃんになることやった。そして、その夢は初めての妊娠出産で叶うことになる」
菜苗「双子、三つ子とか?」
栄「五つ子や」手を広げて見せる。
七夕「ええ、楽しそう!!」※子供の発想。
菜苗「初めてで、五つ子!?」驚愕。
栄「大親友が、五人も子供産んだんや。なら、私も‼ と相成ったわけや。ということで、津慕美さんは、僕の命の恩人なんや」
七夕「そりゃあ、手伝いくらい行くよなぁ」
菜苗「うん、行く。私でも行く」