「お前ら、舞妓になれ」。

城「みんなあ、おはよう☆」
高峰岸と菅沼くんが、びくってする。
城「何をそんなに怯えているの?」
前橋「ふふふ、城さんの美しさにさ」
城「やあだあ、先生ったら!! あ、私が美しいと言えば、下の子たちも相当美しいと思うのですが」
前橋「何、芸能界デビューでもするの、城さん家の三つ子ちゃん」
城「いえ、まあ、ある意味、芸能の世界っちゃあそうなんだろうですけど、仕事柄お茶屋遊びをよくする父が何か思いついちゃったみたいで」
菅沼「城せんぱいん家のお父さん、相当、儲かってるんですね」
城「ううん、おつきあいだよ。まあ、うちのお父さんの日本画のモデルにしてもらったら、めちゃくちゃ売れるという伝説があるらしくって。むしろ、お茶屋さんのほうから遊びに来て下さいってなるんだよ。それで、お父さんがお客さん連れて、よく行くの」
前橋「まあ、展覧会で観たところ、いちばん綺麗に描かれていたのは、実の娘だったみたいだけどね」
城「そんなの、当たり前ですよお〜。で、下の妹ふたりに『お前ら、顔は良いんだから、舞妓になればいいじゃん♪ 姉妹で舞妓なんて、話題になるぞ』って」
高峰岸「城のお父さんが極悪非道すぎる…」
菅沼「上のお姉ちゃんは、医学部出て、大学院まで通ってるのに、妹は中学出てすぐ舞妓…」
前橋「そんなこと言ったら、僕、大学二回卒業してるからね?」
高峰岸「あれ、弟は? お前、弟もいたよね?」
城「京都はどこ行っても後継者不足で悩んでるからどっか行けだって」
高峰岸「お前の父親、どういう頭してんだよ…」
前橋「やはり、芸術家なんてどっかおかしいくらいがちょうどいいんだよ。普通の人だったら、普通の作品しか作れないじゃん」
城「いえいえ、うちの父だって、三つ子でなければ、きっと高校くらい行かせてあげましたよ。公立の」
高峰岸「京都は、私立の中学・高校、当たり前なのに!!」
菅沼「しかも、別に、家が貧乏というわけでもないのに!!」
城「うんと、夜間とか通信制なら金出してやらんでもないぞ、とも言ってました」
高峰岸「お前、それ、聞いてなんとも思わないの?」
城「ええ…? まあ、私でお金遣いすぎちゃったんなら、仕方ないかあって」
前橋「まあ、顔となんかの技術があれば生きていけるよ、きっと」
菅沼「それで、自分が亡くなった後は、三つ子らに城せんぱいの面倒見させる気なんだから、本当に信じられない人ですよね、城せんぱいのお父さん…」
高峰岸「頭が痛い、胸が痛い…」涙。
以下、読了。

フラクタル(3)(完) (ガンガンコミックスONLINE)

フラクタル(3)(完) (ガンガンコミックスONLINE)