医学部、三大ふわふわ。

朝霞「あずみんって、なんで美稲を目の敵にしてるんだっけ?」
米谷「なんや、今更な質問やなあ」
朝霞「いや、最近、なんかふたり和解してきてるっぽいし、この機会に再確認しておこうかと思ってな」
皋「え、せせらぎちゃんが、美稲の美しさに嫉妬してるんじゃなかったっけ?」
米谷「いやいや、安曇野さんも結構な美人さんやで? ほら、大学のミスコン優勝してはるし」
皋「美稲もミスターコンテスト、優勝したよね」
安曇野「うん。あのね、美稲くん、こんなに美しいじゃない。なのに、男でしょ?」
美稲「男ですけど!?」
皋「ああ、なんで、こんなに美しいのに男!? という一点にのみ、腹が立ったんだ」
安曇野「うん、そう」こくん。
米谷「でも、美稲くん、お姉さんと妹さん居るやろ」
安曇野「ふふ、ふふふふ」
皋「せせらぎちゃん、嬉しそう☆」
朝霞「思い出し笑いしてる」
米谷「こ、恐い…」
安曇野「叶恵お姉さま、六回生。同じく、圭一先輩、六回生。望月先輩、五回生。美稲くん、あれ、何回生だっけ。まあ、いいや。そして、次実ちゃん、一回生。もう、死ぬほど可愛かった。あの夢のような医学部テニス部。もう、素敵。素敵って、こういうことを言うのねと思ったわ」
米谷「改めて思うけど、美稲くん家、三人きょうだい全員医学部に在籍してはった時あったんや。国立にせよ、地獄やな…」
朝霞「主に、学費と教科書代がな」
美稲「え、でも、次実はほとんど姉ちゃんの教科書使ってはったから。六回生ともなったら、国試対策くらいやろ。問題集くらい買えばええから」
皋「超うけるよね。私、六回生になったら、最初のほうに習ったやつ、全部忘れ去ってたよ」
米谷「同じく。全然、笑い事やないけどな。おかげで、国試対策の予備校代が…」
朝霞「ああ、そういう仕組みか。いつの時代も、同じだな。中学生、高校生、大学生。みんな、同じ轍の輪を踏んでいるな」
安曇野「塾だの、予備校だの、そういうものでしょう。習ったばっかりなら、みんな覚えてるけども」
朝霞「あ、ということは、あずみんが皋のこと好きなのは、美稲の場合とは逆ってことか」
安曇野「うん、そう。同族嫌悪の反対で、同族大好き☆ みたいな」
米谷「語呂が悪い…」
安曇野「だって、都会の医学部よ。せせみたいに、田舎育ちのふわふわした子なんて、居るわけないと思っていたのよ。そこに、果枝つん。ポニーテールのよく似合う医学部剣道部のジャージ着て、いっつも教室の最前列でただただ寝続ける子。もう、運命よね、これ!!」
美稲「……。皋、よう卒業できたな。今、思えば」
朝霞「大丈夫だよ。一回生なんて、ほぼ専門入ってないから」
皋「そう言えば、私、朝霞のおかげで、ドイツ語単位取れたんだった。英語訳ドイツ語ノートのおかげで」
米谷「……。は?」
安曇野「だから、ドイツ語のノートを英語で訳してあるのよ、やーたん」
米谷「いや、そこは日本語でええやん。ここ、日本の大学やで?」
皋「だって、私、英検一級だし、朝霞もだし」
米谷「意味が解らん」
朝霞「なんだか、あの頃はみんなふわふわしていたっけなあ」
皋「朝霞は、よく体育の授業で倒れていたっけ」
米谷「それをよく医務室まで連れていってあげたっけ」
朝霞「あの時は、どうもありがとう。米谷さん」
美稲「なんていうか、ゆるかったな。ほんまに」
朝霞「え、ゆるいのはお前もだろ。美稲、皋、あずみんで、医学部三大ふわふわと呼ばれていたんだぞ?」
美稲「オレ、そんなにふわふわしてたつもりないんやけど…」
安曇野「あれじゃない? 結構、最初のほうに、介護施設だのなんだの見学に行ったじゃない。その時、エプロン持ってこいって言われて、美稲くんのエプロンがものすごくファンシーだったのよ」
美稲「だって、あれは、我が家共有のエプロンだもの!! 大体、女の子が使うんです!!」
朝霞「それをためらいもなく持ってくるお前だよ。別に、白衣でもいいですよって言ってったのに」
美稲「え、それ、白衣でも良かったの!?」
安曇野「だから、ものすごく最初のほうで、まだ白衣着なきゃならない講義もあまりないから、白衣買ってなかったら、エプロンでいいですよっていうあれよ」
美稲「はめられた〜!!」
米谷「いや、誰もはめてへんから」