服で迷走する、果枝つん。

皋「私って、どんな服が似合うの?」
美稲「は?」
米谷「は? って、ことはないやろ」
安曇野「美稲くん。そこがあなたの限界。やーたんが、女子からモテモテな理由はここなのよ!!」
朝霞「だってさ、美稲」
美稲「オレだって、妹は大事にしてるのに!! 皆して、酷い!!」
朝霞「妹大事にしすぎて、病院の屋上をイングリッシュガーデンにする男…」
皋「あ、じゃあ、米谷さんも、妹のみぽりんが結婚したら、病院になんか作るのかなっ?」
安曇野「まあ、それは、きっと大層愉快でしょうね」
朝霞「愉快だろうね」
米谷「……。実は、アメリカ留学で、ここの大学出身の医者と仲良くなってたりして」
皋「ふうん」
安曇野「そこ自体には、興味ないのね」
皋「いや、だって、米谷さんとは仲良しだけど、妹さんはよく知らないし」
安曇野「まあ、そうよね」
朝霞「しかし、アメリカまで行ったのに、ここの大学の人ですか」
米谷「そうなんや。心外の次期エースと期待されてはる人らしくてな」
安曇野「心臓外科医で、アメリカ留学なんでベッタベッタじゃない」
米谷「いや、そこはアメリカでええやろ。でもなあ、相手、外科医やで?」
皋「外科医の何が、そんなに嫌なの?」うるうる。
安曇野「別に、米谷さんは私たち外科ガールが嫌いなわけではないのよ。みぽりんの問題だから」
米谷「ところてん食べてるのに、脱臼した話しないでよ!! って、気持ち悪くなったみたいで、それをぶん投げられたことはある」
朝霞「ところてんと、脱臼と関係あるかなあ…?」不思議。
安曇野「よく解らないけど、なんだか気持ち悪くなってしまったのね。みぽりんは、感受性豊かな女の子なのね」
皋「解剖気持ち悪いとかいう人って、何が気持ち悪いの? 私も、さすがに殺人事件の現場は、嫌だけども」
美稲「救急に居る人がよう言うわ…」
安曇野「まあね、救急はね。意味の解らない怪我してくるわよね、本当。あ、頭にキューが刺さった人って、世界に数人は居るのよね。画像見た?」
朝霞「うん、見た」
米谷「ねえ、それ、何の話!? 気持ち悪いとか抜きにして、気になる!!」
美稲「キュー、キューって、あの玉突きの棒…?」
皋「それ。せせらぎちゃんが、面白い本読んでたから、前に見せてもらったんだ☆」
美稲「え、刺さるん…!?」
朝霞「それが、刺さるんだな。さすがに、頭蓋骨を貫くわけでなくて、目のところから」
美稲「ああ、なるほど…」
皋「で、そう言えば、私に似会う服の話だけど」
美稲「え、そこに帰るの?」
皋「女の子の着る服とか、まじで解らん。なんか、大学時代に着てた服をいつまでも着続けるのも、なんだか辛くなってきた今日この頃だし…」遠い目。
安曇野「そうよねえ。なんかライフバランスだの、TPOだの面倒くさくなってくるわよねえ。もう、ずっと制服着てたい。服、考えるの、面倒くさいのよ。本当」
米谷「ははは、おじさんはもうすでにおじさんやからな。その面倒くさいんは、もう乗り越えたんや☆」いい顔。
皋「私も、はやくおばさんになりたい」
朝霞「え、本当に?」
安曇野「おばさんはともかく、お母さんになった果枝つんは、はやく見たいかも」
米谷「あ、それは見たい」
美稲「とりあえず、安曇野さんに雑誌でも見せてもらったら?」
皋「うん、そうする」
米谷「というか、雑誌を買う気はないんやな…」
皋「今んところは、せせらぎちゃんが私に合いそうな雑誌をいろいろみつくろって、私が選んでる状態」
朝霞「うん、だから、自分で買わないの?」
皋「だって、そんな女の子の服の載った雑誌が売ってるところに行くだなんて、恥ずかしくて」
美稲「いや、女の子やろ?」
安曇野「果枝つんって、あれよね。おしゃれな美容室に行く前に、ちょっと庶民的な美容室である程度髪型を整えてから行くみたいな」
美稲「いや、それどころか、皋は床屋やろ?」
皋「ふふん、せせらぎちゃんに言われてからは、やっすい美容室に行ってるんだよ!!」
安曇野「私、人見知りで大学四回生になるまで、髪の毛は地元に帰ったときにのみ切ってたわね。四回生の試験前に、もう暑くてたまらなくてボブにしたのよ」
朝霞「人見知りも、京都の暑さに勝てなかったか」