間をとって。

譲「よっす、良太☆ どした、なんか悩み事でもあんの?」
良太「実は、東大に進むか、京大に進むかで悩んでいるんだ…」
譲「贅沢な悩みだなあ。オレなんか、毎年、進級できるかどうかで悩んでるっていうのに」
良太「それはさすがにどうかと思う。譲の母親は、京大医学部卒業なのに」
譲「あのなあ、母ちゃんは医者だけど、父ちゃんは大工なんだよ。勉強が嫌で、高校中退して大工にまでなったのに、親方の命令で定時制高校に無理やり通わされたんだよ。可哀想な話だろ!? 全く、本末転倒だよ」
良太「業務命令じゃあ仕方ないじゃないか」
譲「まあ、オレの話はいいとして。良太はそもそも何で悩んでんだ?」
良太「父親は『京大へ行け』。母親は『東大へ行け』と言うんだ。お互い、自分の母校に入ってほしいらしくて、『東大に行く』と言うと、父親が『そんなにオレが嫌いなのか』と嘆き、『京大に行く』と言うと、母親が『そんなに私が憎いの』などと頭のおかしなことばかりをわめくんだ…。もう、いい加減にしてほしいよ」
譲「つうか、そもそもさ。良太って、音楽大好きなやつだよな。音楽の学校に行けばいいんじゃないの?」
良太「『音楽は趣味でもできるでしょ。しかも、話題性で選ぶなら、めっちゃ音楽のできる医学生のほうが格好いい』とか言いやがって」
譲「まあ、確かに音楽の学校に通ってて音楽が上手なのは当たり前だもんな」
良太「よくよく考えてみれば元凶は母親なんだ。あいつ、もともと浜太朗と同じ京都の高校に通ってたんだよ。高校時代から浜太朗が好きだったんだよ。じゃあ、何故、東大に行く!? 黙って、好きな先輩おっかけて京大入れや。あの不思議ちゃんめ」
譲「良太、父親を呼び捨てにすんなよ。良太の母ちゃんだって、東京に憧れてたんだよ、きっと」
良太「オレは断然、京都派だ。何故なら、父方の祖父がいる。あの異常なまでのおちつきっぷり。顔はそっくりなのに、俺の父親とは似ても似つかない謎。ああ、そうか。いとこの菜苗お姉さんは、祖父に似ているのだな。それで、あのおちつきっぷりなのか」
譲「そう言えば、医学部の医学科というところはいったん卒業してしまったら、また同じ学部学科には入れないんだってな」
良太「そうだな。まあ、医師免許の取得が目的だから、一回卒業してしまえば目的は達成されてしまうわけだ」
譲「医学部は六年だもんなあ。良太の中では、京大優位みたいだけど、実際、京都行くってなったら、確実に良太の両親泣くよな。いや、京都までついてくるんじゃないのかな」
良太「お、恐ろしいことを言うな!! 浜太朗は、医師になっても結婚の直前まで一人暮らしをした経験がなかったんだぞ。それをいじられまくって、それは肩身の狭い思いをしたそうなんだ。大学生にもなって、男が一人暮らしをしなくていつするんだ!?」
譲「じゃあさあ、間をとって名古屋大学に入ったら?」
良太「な、名古屋だって…!?」激震、走る。
以下、読了。

ヨルムンガンド 7 (サンデーGXコミックス)

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