栄は食べ放題、良太は出禁。

七夕「なあなあ、栄。栄がくず屋のお菓子食べ放題って本当か!?」わくわく。
栄「うん。ほんまやで」
菜苗「良太くんは出禁なのに」
栄「うん、良太はな。まあ、仕方おへん。何せ、父親似、つまりは早苗おじいちゃん似やからな」
七夕「良太って誰?」
菜苗「栄くんと私のいとこ」
七夕「じゃあ、七夕のいとこ?」
栄「いや、そら違うと違うんやないやろか」
七夕「え、それ、違うの、違わないの?」混乱。
菜苗「何をそんな、京都人的な言い回しを。小さい子は、混乱しちゃうでしょ?」
栄「あのな、七夕。いとこにも、父方、母方ってぇのがあってな」
七夕「え、七夕と七夕のお母さま、実ははとこらしいぞ?」
栄「うん、あのな。七夕んところは、圭一おじさんのせいで、めっちゃ複雑やけどな。普通、母親と娘がはとこになるようなことは、一部の時代、地域でしかありえへんことでな」
菜苗「ていうか、七夕、誓子とはとこなの?」
栄「いとこの子供同士がはとこやからな。圭一おじさんと綾綺先生がいとこやろ?」
菜苗「あぁ、うん、そっか。ていうか、はとこ」
栄「お前の父親のせいやからな。こんな面倒なことになってんの」
菜苗「まあ、話を戻すとして。恵実おばあさまの実家がくず屋なのね。で、大学生で茶道のサークルに入っていたのが、早苗おじいさまね」
七夕「なんだ、七夕と関係ないじゃん」
栄「そう、関係おへんのやで?」
菜苗「まあ、そういうことがあって、二人は出会ったのね。そして、早苗おじいさまがくず屋の和菓子が大好物だってことで、それなら、これから好きなだけ食べてもいいよとのお許しが出たの」
七夕「いいな、それ!!」
栄「んで、そもそも茶道のサークルも、和菓子目当てなくらいやったそうやからな。それはもう、店が潰れん勢いで毎日毎日来はるわけや。それでも、一度、言うてしまったことやからな。店側もなしには出来ひんわけや」
七夕「いや、それにしても、流石に察するだろ。確か、薬学部? だっけ。頭、いいんだからさ」
菜苗「なんだろうね、もはや、戦いみたいになっていたのかも。お互いに」
栄「まあ、そんなこんなあって、浜太朗おじさんが生まれる。顔は父親にそっくり」
七夕「こいつぁ、やばい!! って、なったのか」
菜苗「でも、本当に可哀想よね。そんな理由で、母親の実家に出禁って」
栄「そういうわけで、僕は再び和菓子食べ放題の権利を得たわけや。僕は分別あるから、店が潰れるほどにはよう行かへんけども」
菜苗「でもね、良太くん、お父さんに似てしまったのよね」
栄「遺伝子レベルで、鬼門の顔なんやろな。くず屋も世代交代してはるのに」
七夕「会ったことないけど、良太、可哀想すぎる」ほろり。