道花ちゃんと、栄くんは通じ合っている。

七夕「なあ、七夕に隠してること、まだあるんだろ」
菜苗「何の話?」
栄「ああ、ほのりんのこと?」
七夕「なんかそういうちょっと頭がおかしいくらい、頭が良い人の知り合いは他にいないのか? ふたりとも」
菜苗「え、竹乃進おじさま?」
七夕「化学バカは知ってるよ!! もろに、親戚だよ!!」
栄「ああ、うん。他に、誰か居ったかなあ。あ、道花ちゃん」
菜苗「お、女の子…!?」
栄「いや、普通に統の同級生やけど。親が医者同士で、小学校一緒で、女の子ってことで」
七夕「なんか、統の友達だったら、菜苗も会ってそうなもんだけどな」
栄「こいつ、人見知りやからな」
菜苗「なんで、私が統さんの同級生まで知ってなくちゃあならないのよ。私、医者になるための勉強で忙しいんだからね」
栄「うん、化学バカやろ」
七夕「うん、化学バカだな」
菜苗「何よう、もう!! 剣道、将棋以外にも、化学だって教わってるんだからね!! 嘘じゃあないわよ」
七夕「はいはい」
栄「うんと、道花ちゃんとは、気が合うな」
菜苗「え、数学好きなの?」
栄「道花ちゃんは、自分の父親大好きで、その父親が好きなものが好きという理論を持ち合わせている」
七夕「わあ、栄と一緒じゃん!!」
菜苗「一緒ね」
栄「具体的に言うと、あの人、本を丸々一冊暗記するのが好き。それは、もう医学部生のようなことを小学校に入る前からしてはる」
菜苗「私、九九からよ。丸暗記って」
栄「まあね、普通の人は」
七夕「でも、東大生の幼少期って電車だの昆虫だの何かしら極めてるらしいよね」
栄「まあ、その未来の東大生たちは、その対象がそもそも好きだから覚えるわけやろ。道花ちゃんは、自分の父親が好きだから、自分の頭の中味も一緒にしたいなあ☆ って、思って、覚えるわけや」
菜苗「……。?」
七夕「ああ、うん。なんか、心の闇が」
栄「それで、いっつも統が道花ちゃんに怯えた話をようしはるんや。たとえば、生活の時間に、星座88個すべての名前を言うとかな」
七夕「でも、別に星座が好きなわけじゃあないんだろ」
栄「うん、僕の場合は半分寝たきりみたいなもんやろ。道花ちゃんのお父さんも、おじいさんも、幼少期にはそうらしかったから、知識に偏るんは解るんや。道花ちゃん、登山部やし」
菜苗「と、登山部…!?」
七夕「本来、お外で遊ぶの大好きな子なのか」
菜苗「その方は、一体、どこへ行こうとしてるの?」
栄「え、お嫁さんになりたいんやって。お父さんの」
菜苗「え、こわい…」
七夕「いや、菜苗だって、竹乃進のお嫁さんになりたいんだろ?」
菜苗「だって、竹乃進おじさまは、私のお父さんではないもの!!」
七夕「え、それ、七夕のお父さまが…。あ、うん、まあ、いいや」遠い目。
栄「うん、まあ。僕もあえて触れるなんて無粋なことはしないでおくわ…」
菜苗「何よう、ふたりして!!」