菜苗の、手帳。

図書館。
菜苗「はあっ、大変!! 急いでおうちに帰らなくてはっ!!」
七夕「何をあんなに生き急いでるんだろうな、菜苗のやつは」
栄「うん、人生全体がな。あれ、これ、七夕の?」
七夕「これ、菜苗の。そうだ、あいつの手帳見てやろう」
栄「見るんかい」
七夕「あった。今年の目標」
栄「今年の、ってかきっと毎年同じやろ。菜苗は」
七夕「七夕もそんな気がするぞ。いつまでもおんなじところをぐるぐる回ってるのが菜苗だもんな!!」
栄「うんうん」
七夕「勉強。菜苗は基礎を大事にする女になります」
栄「……」
七夕「なんか聞いたことありそうだな、栄?」
栄「めっちゃうちの母親が言いはりそうやなあと思って」
菜苗「うん、統さん経由次実叔母さまの教えだよ?」
七夕「うわっ!! お前、帰ったんじゃなかったのかよ?」
菜苗「しょうがないでしょう。おうちの鍵を入れた手帳を忘れてしまったのだから」
栄「せやったら、余計、忘れんなよ」
七夕「うんうん」
菜苗「勉強ね。勉強は、ほら。私と統さん、大学落ちたら周りに必要以上に哀れだなあと思われてしまうわよね。そうよね、ね?」
七夕「菜苗が、恐い…」涙目。
栄「お前、姪っ子を泣かせんなよ」
菜苗「いいわよね。栄くんは、ほら。最悪えーおー入試なるものがあるじゃない。どうせ数学オリンピックでいい成績とったら、一般入試なんて関係ないものね。あーあ、うらやましい」
栄「いや、医学部医学科でも、そういうんはあるから」
菜苗「私みたいな、うじうじした女がそんなりあじゅう向け入試受けられるはずないでしょう。ああいうのは、運動部入って、生徒会入って、ボランティアもがんばってます☆ みたいな子向けなのよ。私、そんなの無理だから。勉強だけで精一杯だから」
七夕「ねえ、菜苗。急いでるんじゃなかったっけ…? あは、あははは」大泣き。
栄「お前さあ、大学落ちたら可哀想に思われるのは、統もお前も一緒やけど、統もお前と一緒みたいに思われるから、そのぐちぐち言わはるん、やめてくれる?」
菜苗「うるせえよ、天才児が」
七夕「いやあ〜っ!! うえ、うえ〜んっ!!」号泣。



統「ゆったん!? どうしたの、あれ、……」
栄「あ、統も図書館来てはったんやあ☆」
菜苗「統さん、こんにちは」
七夕「……」ひっくひっくしてる。
統「……。?」
七夕「けんかがまじすぎる…」ぼそっ。
統「ゆったん、もしかして具合悪いん? 統お姉ちゃんがおうちまで連れて行ってあげようか」
七夕「うん、ゆったん、おうち帰る」
菜苗「あ、私もそろそろ帰ろっかな☆」
栄「統、僕、まだちょっと勉強してから帰るわ」
統「うん、あんまり遅くならないうちに帰るんやで」
栄「うん、じゃあまた☆」
菜苗「ふふふ☆」
七夕「やべえ、今日、寝たら夢に出そう…」ぼそり。