幸と圭一、肩車の思い出。

圭一「なんだかな、一体、何を間違ったのだろう…?」
昴耀「だから、さっき私が説明したとおりですよ」
綾綺「なあ、仕事終わったら、ご飯食べに行かへん?」
昴耀「そうしましょう。菜苗ちゃんも病院に来ているようですし、一緒に連れて行きましょう」窓の外を見ている。
圭一「え、なんで?」
綾綺「あ、前橋教授や。お手手つないではる。可愛い、おじいちゃんと孫娘みたいや☆」笑顔。
圭一「あの、私の方は両方あれですが、美稲さん家のほうは御存命なんですよ?」
昴耀「いや、菜苗ちゃん、早苗さんと恵実さんとは仲良いですよ。圭一さんと微妙なだけであって」
圭一「……。菜苗、前橋教授、ご飯食べに行きましょう!!」窓を開けて、ぶんぶん手を振る。



店。
菜苗「……」
前橋「なんかみんなして暗いね?」
昴耀「それを説明するともっとあれなんで言いません。ご了承ください」
前橋「ああ、解った」
圭一「菜苗。前橋教授とは、よく会うんですか?」
菜苗「……」うつむく。
前橋「ほら、幸じいじと小雪ばあばの話聞きたいって。圭一くんじゃあ、ほとんど解らないでしょ?」
圭一「わ、解りませんが…」押し黙る。
菜苗「私、お母さまのほうのおじいさまとおばあさまも好きだけど、幸じいじと小雪ばあばに会いたかったな。お父さまと違って、話合いそうだし…」
圭一「あ、そうだ。兄さん、竹乃進おじさん呼ぼうか、菜苗!!」必死。
綾綺「……。あいつ、救急に呼び出されて、ぶっとおしでオペやったんや。休ませてやって」
圭一「あ、はい。そうですよね…」しゅん。
昴耀「菜苗ちゃん、グラタン食べないんですか?」
菜苗「どちらかと言うと、私ではなく栄くんが好きなものですよね? えびだのなんだのって」父に目を遣る。
昴耀「圭一さん…」
綾綺「あれや。小雪さん、食事時には、圭一くんのお父さんの話して聞かせてくれはったって。繰り返し聞かされてるから何かしら覚えてはるやろ?」
圭一「あ、そうだ。肩車。私の父は、病弱だったんですが、男らしい父親像に憧れていたんでしょうね。体調のよい日に、親子三人で琵琶湖畔を散歩することになったんです。なんかもうはしゃいじゃったんでしょうね。よせばいいのに、私を肩車して。その時、母が撮った写真があるんですが、それはもう苦しそうで。まあ、実際、夜中に熱出してそのまま入院しちゃったんですけどね」
前橋「幸くん、なんか、うん…」遠い目。
昴耀「解ります、父親には解りますよ!!」感涙。
綾綺さん、嗚咽。
圭一「え、そんなに?」
菜苗「私、本当に幸じいじ…」もう寂しさで胸がいっぱい。
綾綺「こんなにいい話のはずやのに、何故!!」
昴耀「本当にねえ…」