「お風呂に入りに来なかった」。

鷺沼「お風呂に入りに来なかったんですよ。どう思います、一二三?」
一二三先生「呼び捨てすんな」
鷺沼「じゃあ、ミスター、ひ・ふ・み?」
一二三先生「そういうところじゃあないかなあ…。なあ、名寄や?」振り向く。
名寄、頷く。
一二三先生「名寄が、口きいてくんない」手で顔を覆う。
鷺沼「な? いつも言い聞かせてるとおりだろ。名寄がそんな応対をするたびに、こうして我らが一二三先生は傷つくのだ」
名寄「だって、たぶん、数学的才能が…」
一二三先生「解ってるよ、鷺沼のほうが才能はあるよ!? だからって、今までずっと研究してきた先生の立場はどうなるの!?」がばっとなーくんの両方をつかむ。
名寄「こういうことをしてくるから怖いのです…」とノートを見せ、顔をそらす。
一二三先生「みんなに自分数学者なんすよって言うと、ええ? って大抵驚かれるんだよ。え、登山家じゃなくて? みたいな。肌が黒いからってひどい!!」
鷺沼「そんなに傷ついてるくせして、美白に走ろうとはしないんですね?」
一二三先生「数学者と言えば、黒い肌!! それを定着させたいんだ。ていうか、『数愛(すうあい)』に載りたい…。巻頭のロングインタビュー…」
名寄「ああ、鷺沼先輩が載ってたやつか」
一二三先生「何故、弟子が先に…!!」ぐるんと鷺沼をにらみつける。
鷺沼「やっぱり、みんな若いほうがいいんすよ。きっと。だって、フィールズ賞だって年齢制限あるし…」
一二三先生「フィールズ賞、オレなら取れるってか? ああ、そのとおりだよ!!」
名寄「ああ、面倒くさい…」