足裏が、かさかさする。

鷺沼「名寄、冬だな…」
名寄「はい、冬ですね」
鶫「どうしたの、そんな物憂げに」
鷺沼「足の裏がすんごく乾燥してるんだ。かさかさなんだ」
名寄「まあ、二十歳過ぎたら、ありとあらゆるものが『成長』から『老化』に置き換わっていきますからねえ。目も二十歳以降は悪くなっていく一方だって…」
鷺沼「うん、目も乾燥してるし、顔の皮膚も乾燥してるし、足の裏がもう…」涙。
鶫「どれくらいかさかさ?」
鷺沼「オレ、今、冬だからさ。羊さんみたいな敷パッドを使ってるわけよ。素足だと、その毛が、足裏にひっかかるわけよ」
名寄「それは、もう、羊さんみたいな感触をじっくり味わうどころではなくなってしまいますね」
鷺沼「そうだよ、もう不幸でしかないよ!! 紙やすりみたいな足で、羊さんみたいなところ歩くんだぜ!? 羊さんが可哀想!!」顔を手で覆う。
鶫「ひ、羊さんが…」怯える。
鷺沼「だから、名寄、頼む!! これ以上、羊さんを傷つけたくはないんだ!! 素敵ボディクリームを教えてくれ!!」
名寄「ドラッグストア!! ドラッグストアに行きましょう!! 今、乾燥する季節だから、いっぱい売ってますよ!?」
鶫「羊、羊さんをどうか助けてあげて…?」
鷺沼「解ったよ、鶫ちゃん!! 鶫ちゃんも、一緒に行くかい?」
鶫「あ、リップクリーム買って?」
鷺沼「買ってあげるとも!!」
名寄「入浴剤、買ってくれます?」
鷺沼「やっすいやつなら」
名寄「ええ、300円しないやつ…?」
鶫「あれは、なんか、気持ち的に豊かにならないよねえ…」
名寄「お風呂はりらっくすするために入るのです」
鷺沼「うるせえ、ひとりぐらしのくせに。わざわざたっかい入浴剤使ってどうするのだ。実家に帰ったら、高いの使え。家族分で割ったら、お得だろ?」
名寄「ええ…。僕、お盆と正月しか実家に帰らないんですけど」
鶫「私もだよ!!」
鷺沼「ふふ…。ふたりとも、オレの部屋の風呂に入るかい?」
名寄「でも、追いだきできないでしょ?」
鷺沼「当たり前だ!!」