「圭一くんには、橋本さん家の子っぽさが足りてないよね」。

圭一、綾綺、聡明で御昼御飯。
前橋「うわっ、病院のほう来たの久々だなぁ」
綾綺「まぁ、解剖学教室の教授ですからねぇ。食堂も学食でしょう」
圭一「ご用件は?」もぐもぐ。
前橋「ふぅ、似てないなぁ。君、本当に橋本さん家の子?」
圭一「今は、本匠さん家の子ですが」なんだかショック。
前橋「圭一くんには、橋本さん家の子っぽさが足りてないよね」
綾綺「前橋教授、圭一くんだって素敵ですよ」涙目。
圭一「やめて、綾綺さんが泣くと、こちらが余計切なくなるから‼」
前橋「まぁ、そんなに気にすることでもないよ。だって、圭一くんの父親である幸くんだって、本当は橋本さん家の子じゃないからね」
圭一「え」
前橋「あれ、もしかして知らなかった!?」
綾綺「なんや、それなら圭一くんが橋本さん家の子ぉらしくのうても大丈夫やな」
圭一「いやいや、私は橋本さん家の幸くんの子供ですからね?」
前橋「僕はね、昨日の映画の話をしにきただけなんだ。幸くんなら通じる話が息子の君じゃあ通じないからね。それだけならまだしも、圭一くんは見た目が幸くんに似ていなくて大変残念だなぁといったところだよ。誓子ちゃんは、可愛いけれど、幸くんにも小雪ちゃんにも似ていないし。幸くんがご存命だったならば、『何故、僕の孫に、フランス人の血が混じっている』と言って、誓子ちゃんのおでこを全力でつんつんするだろうところが目に浮かぶよ」
綾綺「誓子ちゃんかて、可愛いのに」ショック。しくしく。
圭一「なんで初孫のおでこをつんつんするのですか‼」慟哭。
前橋「それは、まだ幼い君に向かって、お父さんではなく親父と呼べと強要していたくらいだからね」
綾綺「昨日の映画と言えば、しーちゃん思い出したなぁ」
圭一「胸が、胸が」涙止まらず。
前橋「あの子は、小雪ちゃんとクラスメートだったことがあるんだよ」
圭一「話が全く通じていません」涙流しながら。
前橋「このわからずやさんめ」
綾綺「なんやよう解りしまへんが、切ないっぽいことだけは通じます。せんないことですけれどね。圭一くん、解ってやれや」
圭一「いや、両親の友人のことを解ってやれと言われましても」
前橋「ねえ、それなら、幸くん似の美少女を僕に見せてよ」
圭一「いや、見せてよと言われましても」
綾綺「しーちゃん似の美少女は?」
圭一「それは、綾綺さんが結婚してどうにかして下さい」
綾綺「誓子ちゃんをもらってもええなら」
圭一、無言。