圭一と菜苗、肩車事件。

精神科。
圭一「昴耀くん、デートです!!」
昴耀「は…?」
ナースが、ざわってする。



昴耀「なんだ。娘さんとのデートなら、そう言って下さいよ。なんで子持ちのおっさんふたりがデートしなくちゃあならないんですか。意味不明ですよ」
圭一「ご、ごめんね。昴耀くん…」
昴耀「まあ、菜苗ちゃんですっけ? その子が喜ぶことをしてやりゃあいいんですよ。ね、簡単でしょう」
圭一、目を見開き、押し黙る。
昴耀「息を呑まないでください」
圭一「いや、ほら、うち、ふたりとも女の子じゃあないですか。じゃあ、大体、上の子が喜んだことをやればきっと下の子も、と思うじゃあないですか。特に小さいうちは」
昴耀「まあ、そんなものでしょうかね」
圭一「それが、間違いでした」頭を抱える。
昴耀「当たり前でしょうが。父親は、同じ。母親が、違う。私の次実と、娘の統を見たら解るでしょう。この神経質な私がさらに気を使って使ってそれはもう大変な!!」涙目。
圭一「解ってますよ。昴耀くんの苦労は。私も大変でしたからね。次実ちゃんに、お姉さんとの再婚を許してもらうの」
昴耀「ま、喉元過ぎればなんとやらで、姉妹で同じ扱いをしてしまったんですね?」
圭一「きっかけは、肩車でした」
昴耀「あれ? 確か、誓子ちゃんを肩車してやったら、もう泣かれて泣かれて大変だったという話を遥か昔に聞いたことがあるような気がするのですが。圭一さんの身長が高すぎてこわいって。それを、何故、わざわざ下の娘にしようとなるんですか?」
圭一「いやね。誓子も最初は嫌がったんですよ。それでも、久理がやれやれ言うものですから、何度も挑戦しているうちに、慣れて楽しくなったみたいでね。菜苗もきっとそんなんかなあと思って」
昴耀「あのね、圭一さん。菜苗ちゃんには、美稲さん家の血が流れてるんですよ? 卓球でスマッシュ打ったらきっと本気で絶縁されるって、別所津慕美はそれはもう気をつけて体育の授業を」
圭一「だって、その日泣いたとしても、実の親子ですよ? 寝て起きたらもう忘れてるでしょう? 肩車は嫌にしても、父親自体を避けるとは思わないじゃあないですか!?」号泣。
昴耀「はあ、結局、圭一さんが悪いんじゃあないですか。甲斐中久理は、フランスとのハーフですよ、ものかきですよ。つまり、テンションおかしいんですよ!!」
圭一「うっ、それは否定しきれません…」目をそらす。
昴耀「私、次実と結婚しますって言ったら、次実のお父さん大喜びですよ。こんな気難しい娘をもらってくれるなんて、君は素晴らしいとか初対面で言われるんですよ。ねえ、これ、圭一さんも経験あるでしょう!? 解ってますか、その人との娘ですよ!?」
圭一「姉妹で差別したくなかったんだぁ〜」涙、涙、涙。
昴耀「父親のあなたが、娘の性格の違いも理解できないから!!」
綾綺「なんかものすごく叱られてる」←診察おわった。
圭一「あ、綾綺さん!!」
綾綺「菜苗くんの話?」
昴耀「私、許せません!! 同じ娘を持つ父親として、この男が許せません!!」
綾綺「ああ、うん。僕も、よう許されへんけど。菜苗くんが、昔、給食がどうたらで学校で大泣きしたいう事件な。あれ、圭一くんのお父さんと知り合いの前橋教授に伝えたら、『幸くんなら、殴ってるね』言うてはったけども、そんなん関係なしにみんなに殴られればええと思うで?」
圭一「何が、何が悪かったんでしょうか…」
昴耀「まじで、遊んであげたほうがいいですよ。菜苗ちゃんと」
綾綺「それしかない!! 精神科的にもそれしかない!!」肩に手を置く。
圭一「はい…」
以下、読了。

ちはやふる(26) (BE LOVE KC)

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