なーくん、大人になる2。

名寄「結局、何が言いたいのかというお顔をしていらっしゃいますね」
鷺沼「あ、うん」
名寄「無い物ねだりなんですよ。数学愛ゆえに変な子扱いされた幼き日の自分。それが、今では数学をしていることが本分。むしろ、数学をしなければ怒られてしまうような立場にいるんですよ」
鷺沼「ばかやろう、オレから数学をとったらただの鶫ちゃんを大好きなだけの男になってしまうんだぞ。この重大性が理解できるか」
名寄「あの、今は僕の話をしているのです。少し、落ちついて下さい」
鶫「うん、黙って聞いてあげて」
鷺沼「ごめんよ、心優しき鶫ちゃん」
名寄「僕はあの数学への冒険心を感じていた日々がとても懐かしいのです。あれもこれも知らないことだらけ。明日は、どこの定理を冒険しようか。ああ、もう考えただけで涙が出てくる…! 僕の失われた日々よ」
鷺沼「お前の言ってること、難しくてよく解らん」
鶫「ええ、私は解るけど?」
名寄「そうです。数学への愛とは、ある種のみじめな立場に追いやられたことから生まれるものでもあったのです。だから、その危うい状況がないと、数学ができない!! アイデアが生まれない!! そして、遠のくフィールズ賞!!」
鷺沼「ばかやろう、オレとどっちが先に受賞するか競争だって言ったのは嘘だったのか!?」
鶫「急に、恵太くんの心の琴線にふれた!!」