幸クンと小雪ちゃんの幼少期。

前橋「幸くんって、異常なまでに道知らないよね。ほら、リホがふたりで伏見稲荷大社に行ってきたらって言ったときに、行き方知らないって言ったよね」
小雪「ええ、駅の真ん前にあるのに…!!」
幸「僕、本当にどこにも行かずに育ってきたもので…」
前橋「じゃあ、何して遊んでたの? 子供のとき」
幸「え、学生の本分は勉学ですよ? 勉強しなくてどうするんですか?」
小雪「幸クン、本当に友達がいなかったんだね」
前橋「勉強して、そのあとは? さすがに小学生だと帰ってからずっと勉強って無理があるでしょ」
幸「宿題、予習・復習が済んだら、そのあとはもうひたすら読書ですね。境内は静かなので、とてもはかどるんです。目が疲れたら、空を見上げるために縁側で」
小雪「それ、もうただのおじいちゃんだよ!?」
前橋「本は何読むの?」
幸「そうですね。小さい頃は、宮沢賢治が好きでした」
小雪「幸クンが宮沢賢治!! すごく似合う!!」
前橋「お寺で読む宮沢賢治かあ…。あれだよね。幸くんって銀河鉄道に乗ったことありそうだよね?」
幸「ふふふ」
小雪「幸クンが笑った!! 本当に乗ったことあるの? いいなあ!!」
幸「そう言えば、勉強や読書のしすぎで、よく低血糖に陥っては、不思議な世界に行っていましたっけ。時たま、教科書に図書券がはさんであったのがいい思い出です」
小雪図書券が増える教科書!? いいなあ」
前橋「お父さん、手渡せばよかったのにね」
幸「たぶん、手渡しでもふたりとも無言でしょうからね。それなら、教科書にはさむほうがいいとふんだのでしょう」
前橋「小雪ちゃんは子供の頃、何して遊んでたの?」
小雪「ええと、宿題やってから遊びに行きました」
前橋「偉いねえ☆」
小雪「ひとりで遊ぶのに変なところ行ったり、人攫いにあうといけないから、神社で遊びなさいねってみんなから言われてた」
前橋「胸がきゅんきゅんするよ。小雪ちゃん」
幸「自分ん家でもないのに、毎日のように神社に行っていたなんて迷惑な娘だな」
前橋「逆だよ。幸くん。小雪ちゃんが神社以外の場所で遊ぶほうがみんなハラハラだったんだよ」
幸「ああ、そういうことですか。それなら、納得です」