楠の下の美女。

青空には白い雲が浮かび、セミが忙しなく鳴いている。大学のシンボルでもある楠の下に、日傘を差した浴衣姿の女性が楚々として立っている。
前橋「お嬢さん、暑くありませんか?僕の研究室まで来てくだされば、おいしいアイスコーヒーがごちそうできるのだけれど…。どうですか?」
突然声をかけられて驚いたのか、日傘が揺れる。
浴衣美人「えーと…」

逡巡する浴衣美人の手を強引にとり、前橋教授はエスコートする。
前橋「僕は前橋という者で、法医学を教えています。お嬢さんの名前は?」
浴衣美人「は…、い…」
前橋(肺…?)
浴衣美人「い、磯香(いそか)どす」
前橋「磯香さん。素敵な名前ですね」
磯香「い、いえ、そんなこと…」
前橋教授の研究室に着く。
前橋「皆、ただいまー。女の子拾ってきたよ☆」笑顔。
菅沼「し、知らない人怖い…」逃げようとする菅沼くんの白衣の首根っこをガッと掴む前橋教授。

前橋「逃げちゃダメだよ、菅沼くん。これが君の目指す運命の人との出逢いだったらどうするつもりだい?」
菅沼「くっ…。ぼ、僕は、お父さんが見合いで嫁を探すから安心しなと言い聞かせられて…」
前橋「残念だけど、菅沼くんのご両親は亡くなられているでしょ?矛盾してないかな?」
菅沼「山形式に死んだ嫁を…」
城「菅沼くん、それって死んだ人と死んだ人を結婚させるんだよ?わざわざ死ぬの?結婚するために?」
菅沼「僕はそれでもい…」高峰岸さんからビンタを食らう。
高峰岸「そんなこと言っちゃダメ!!生きろ、恵太!!」
城「あ、ねえ、この子さ、ミスコンで優勝した人に似てない?」
前橋「ああ、ホントだねー。日傘であまり顔が見えなかったけど、綺麗な顔しているねー」
菅沼「ふざけんな、僕のほうが綺麗な顔してるし」
高峰岸「何故、そこでキレる!?」
城「ふふっ、大好きな前橋教授をぽっと出の女に取られて嫉妬しているんだよ」
前橋「あ、高峰岸くん?アイスコーヒー作ってくれないかな?」
高峰岸「はい、解りました」
城「あなた、すごい汗ねー」
磯香「ああ、はい…」
高峰岸「アイスコーヒーどうぞ」
前橋「夏はやっぱりアイスコーヒーだな」
菅沼「コーヒーゼリーっておいしいですよね」
高峰岸「オレは固いほうが好きかな」
菅沼「僕はドロッドロッくらいのほうが好きです」
城「ああ、分かり合えてないね☆」
磯香「ごちそうさまでした。私はここで…」
前橋「ああ、そう?じゃあね、浜太朗くん。朝霞くんによろしく☆」
浜太朗赤面。逃げ帰る。鼻からアイスコーヒーを垂れ流す高峰岸。得心する城。
浜太朗「あの人、ドSやぁ〜!!初めっから全部解ってはったんやぁ〜!!穴があったら今すぐ入りたいっ!!」涙目。
おわり?