うなされる津慕美ちゃん。

津慕美「朝霞せんせ〜い!!」ぶんぶん手を振る。
朝霞「おう、別所。元気だったか?」
津慕美「うう…。未だに悪夢を見るんです」
朝霞「ま、カフェにでも入ろうか」
津慕美「はい」
カフェ。
朝霞「で、悪夢って?」
津慕美「ええとですね、受験生時代のなんですけど。『京大、落ちたら、次実ちゃんに捨てられる』って…」と言いながらの号泣。
朝霞「ああ、うん。次実ちゃんね…。悪いけど、それ、落ちてたら本当になってたよ?」
津慕美「やっぱり!?やっぱり、そう思いますかっ!?」
朝霞「うん、だって、次実ちゃん僕が頭がいいから僕のこと尊敬してるんだよ」
津慕美「さすが、朝霞先生…。嫌味をさらりと言えるあたり、逆説的に嫌味ではないです」
朝霞「次実ちゃんも、僕も行き過ぎた謙虚は卑屈にしか見えないタイプだからね。怒りすら感じる」
津慕美「ああ、次実ちゃんも『家、お金持だね?』って言われたら、『そうやで』って返します」
朝霞「まあ、年収1,000万円オーバーで金持じゃないです、って嘘だろう」
津慕美「次実ちゃんのお父さんって、MRですよね?私、なれますかね?」
朝霞「やめとけ、やめとけ。次実ちゃんが臨床医になるくらいやっちゃいけないことだから」
津慕美「じゃあ、やめときます。別にMRになったところで、次実ちゃんの将来の職業とは関係ないですから」
朝霞「はあ、それにしても、別所。塾の先生に悩み事相談もいいけれど、僕が卒業したらどうするんだ?」
津慕美「やあだ、大丈夫ですよ。朝霞先生!だって、朝霞先生、医学部の5回生だから、まだ来年までいるし、それに研修医も大学に残ってやるんですよね?」
朝霞「いや、ゴメン。研修は実家から通いたいから、神戸に帰るけど」
津慕美「なんでですかッ!?京都と神戸なんて距離的に大差ないですよ!?今まで友達以上恋人未満の仲良しさんだった次実ちゃんに京大に落ちたからって、『ああ、あの人、おんなしクラスやったかなぁ…』とかそらとぼけられるおっそろしい夢を見たら誰に泣き言を言えばいいんですか!?兄貴に言ったところで、『事実やから、いちいち泣くな。うっとおし』とか返されるんがオチですよ!?」
朝霞「いいことを教えてあげよう。次実ちゃんはアンチ東大の京大生だが、理Ⅲだけは別格だから、奇跡的に別所が理Ⅲに受かったら次実ちゃんに捨てられることは一生涯ないだろう」
津慕美「そんなしょうもないアドバイス、いらないです!!今更、私が医者になってどうするんですかぁ!?」
朝霞「いやいや、理Ⅲを受ける人にも3タイプあってね、「絶対、受からない人」と「運がよければ受かる人」と「10回受けたとしたら10回とも受かる人」で、3番目の人は宇宙人と呼ばれるね。英検1級に受かり続けるのが趣味の人がたまにいるだろう、そういう次元だよ」
津慕美「うう、英検1級に受かり続けるのが趣味って…。朝霞先生やないですか?」
朝霞「いやあ、皋っていう道産子の可愛らしい女の子がいてね、彼女はちゃんばらと英語と物理をこよなく愛している。そんな可愛らしい皋が輝ける場所が英検会場だと思うんだよね☆」
津慕美「そう言えば、ドイツ語のノートをドイツ語だけで取ってる人がいたって噂があるんだけど、あれ、朝霞先生ですよね?一応、確認のため」
朝霞「うん、まあね。先述の皋にドイツ語のノート貸してくれって頼まれて、そうしてやったら何故か半泣きしたから、英訳してあげたんだけどね」
津慕美「そこは、素直に日本語訳でええやないですか…」
朝霞「英語のほうが親戚だから、訳しやすいんだよ」
津慕美「はあ…」

以下、読了。
電波女と青春男 1 (電撃コミックス)