にんじん食べられへん、菜苗。

栄「大体、菜苗は七夕を残念な子ぉ扱いしたがりはるけどな、お前こそ面倒くさい子ぉやぞ?」
菜苗「な、何よ?」
栄「今回の給食の話で言うとな、こいつ小1ん時に、にんじん食べられへんで、昼休みもそのまんま教室に残されてたんや」
七夕「それで?」
栄「いきなり、マジ泣きしはじめた。それも、隣の教室にも聞こえるような大声でな。もう、いろんなところから大人がやってきて大変だったわ。それにつきあわされる、いとこの僕」
七夕「そんなことしたら、先生が可哀想だろが」
菜苗「……。そんなこと、ありましたっけ?」
栄「お前、マジでか」
菜苗「別に私、よく泣くから日常生活の延長であって、特別どうこういうあれは」
栄「違う違う。ほんまに、ジドウギャクタイかいうくらいの泣き方やったんやて。菜苗に聞いても何も答えへんから、僕を呼んでこれどういうこと? って」
七夕「そんなに嫌なら、にんじん食べなくてもいいよぉ」
菜苗「な、七夕くんに、ひかれてる…‼」
栄「しょうがないから、空き教室にふたりして連れていかれてたんや。で、叶恵伯母さんが迎えに来はって。我が家は複雑な家庭環境で、母親の違う姉がいるんですが、その子がずっと難しい病気なんです。父親としては、区別してるつもりはないんですが、子供のほうはね。できないことがひとつでもあったら、父親に捨てられてしまうんではないかと思い込んでいるようで。まあ、この子も難しい子ですが、悪い子ではないので、これからもよろしくお願いしますね。とか長々と説明してたんやけど、その先生は担任外れたな」
七夕「なんか、菜苗だけが悪いんじゃなかったんだな」しんみり。
菜苗「やめて、ふたりともそんな目で私を見ないで‼ いやあ〜‼」逃げた。