幸クン、初めてのお酒。

幸「前橋さん。僕も、二十歳になりましたので、飲みに連れて行って下さい」
前橋「そうかあ、幸くんももう成人かあ…。あれ、でも、こういうのって、普通、お父さんに連れて行ってもらうものでは…?」
幸「はあ、父とは前橋さん以上に交流がないもので」
前橋「それ、相当だよ…?」
幸「まあ、いいんです」
前橋「で、幸くんの誕生日っていつだったの?」
幸「三月三日です」
前橋「ひなまつり!!」
幸「そうです。桃の節句の日に生まれ、幸なんて名前だから、十中八九、女だと思われるんです」
前橋「ひなまつり、楽しかった?」
幸「なんですか、その笑顔。楽しくありませんよ。僕の母は、僕を産む前に亡くなったんですから、僕の誕生日は、母の命日なんですよ。父はお経をあげているに決まっているじゃあないですか」
前橋「ああ、うん、そうなるね…」
幸「別に寺の子供だから、ケーキを食べてはダメだなんて決まりはないけれども、ケーキってそもそもおいしいものなんですか。女子供は、みんなケーキが好きだなんて一体誰が決めたんですか?」
前橋「ああ、解った。解ったから。ケーキが好きじゃないなら、食べなくてもいいじゃん。大体、今日はこれから飲みに行くんでしょ?」
幸「そうでした」