美術館の罠にはまる、高峰岸。

高峰岸「あ、会津八一…!!教授、会津八一展やってますよ!!」
前橋「あー、確か、8月1日生まれだから、名前が『八一(やいち)』さんの人?あのね、朝霞くんっていう子がいるんだけど、自分も9月17日生まれで『水鶏(くいな)』くんって名前だから、そうわかったときに嬉々として僕に語って聞かせてくれたんだよー☆ふふ」
高峰岸「くっ、菅沼ではないが、教授の笑顔は可愛らしいな、本当に」
前橋「で、その人、何した人だっけ…?鷹山宇一とは違うの?」
高峰岸「教授、雰囲気だけでモノを語っておられませんか…?」
前橋「そうかもー、ふふ」
高峰岸「もう、やだ!!この人、笑顔を振り撒けば許されると思ってるんだからっ!!」
前橋「ごめんね☆」
高峰岸「まあ、ありていに言えば、奈良ラブ!!な人です」
前橋「奈良の美術館だもんねー」
高峰岸「そうですね」
前橋「じゃ、行こうかぁー」
高峰岸「話は戻りますが、昔って、女の子で末っ子だと、もう名前考えるのも面倒だから『とめ』とか、『すえ』とかって名前にされてたんですよねー」
前橋「よかったじゃん、高峰岸蓮汰狼」
高峰岸「無駄に画数が多すぎるんですよ…。絶対、意味とか考えてないし!!城からは、『私なんて、紗々よ、紗々!!後ろのほう、漢字じゃないからね!!記号だよ、記号!!』って言いがかりをつけられる始末…。オレは、お前の名付け親じゃねえよ!!って思うんですけど」



そして、一時間後…。
前橋「ねえ、高峰岸くん。なんで、美術館で筆買うの?」
高峰岸「ずっと欲しかったんです!!くぅ、400円で入館してその10倍以上の金を使わせるとは卑怯なり!!」
前橋「……」白い目で見る。高峰岸くんの手には、図録とその他もろもろのお土産が。
高峰岸「はぁー、それはそれとして、あのご本には萌えました」
前橋「ど、どの本…!?」
高峰岸「若草山と鹿さんの絵に、八一氏の文があって、もうあのほんわかした感じ!!超、奈良っぽい!!京都じゃあ、ああはいきませんよ。舞妓さんは京都出身者が少ないからあんなの京都の代表とか思われたらやだしみたいな空気感があるでしょう。だからね、土台無理なんですよー。大体、京都と奈良じゃあ、今の街ができたなりたちが違っていてですね!!」
前橋「うーん、うちの研究室って個別に楽しめる子ばっかだよね☆」
高峰岸「ん?菅沼の趣味は教授鑑賞からの妄想で、城は…?」
前橋「いや、それ…。うーん、あながち間違ってもいないか。城さんは銘仙マニアなんだよ」
高峰岸「メイセン?」
前橋「城さん、アンティーク着物好きでしょう」
高峰岸「そういえば、学会は着物で来ますね」
前橋「そうそう。菅沼くんはクラシック音楽とか古典的な小説とか映画が好きだし、前任の教授はかけじくとか好きでね」
高峰岸「みんな、古いものが好きなんですね」
前橋「そうだね。それじゃあ、僕は顔を出すところがあるから、ここでさよならだね」
高峰岸「それじゃあ」
前橋「ん、じゃあね」